リサンプリングフィルターにおける「リンギング現象」とは?
- siseong3
- 7月20日
- 読了時間: 3分
オーディオや画像などのデジタル信号を扱う際に、サンプリングレートを変更(リサンプリング) することはよくあります。しかしその過程で、思わぬ副作用である 「リンギング現象」 が発生することがあります。
この記事では、リンギングがなぜ起きるのか、それがどのような影響を与えるのか、またその対策について解説します。
リンギング現象とは?
リンギングとは、信号の急激な変化部分に現れる不自然な振動のことです。
オーディオでは、高周波のノイズやエコーのように聞こえることがあります。
画像では、文字や線の周りに細い縞や影のような輪郭として現れます。
要するに、存在しないはずの"余韻"や"縁取り"が人工的に生まれる現象です。

なぜリンギングが発生するのか?
リサンプリングでは、**ローパスフィルター(低域通過フィルター)**を用いて、高周波成分を取り除き、**エイリアシング(折り返し歪み)**を防ぎます。
理想的なローパスフィルターは、理論上では sinc関数(sin(x)/x) です。しかしこの関数には以下の特徴があります:
無限に続く振動
現実世界では正確に実装できない
実装時には**ウィンドウ処理(切り捨て)**して使用する
このウィンドウ処理によって、振動が完全には止まらずリンギングが発生してしまうのです。
オーディオでのリンギング例
以下のような場面でリンギングが目立ちます:
ドラムなどの強いアタック音
高解像度の音源をアップサンプリングした場合
静かなパートでの不自然な高周波ノイズ

リンギングを抑える方法
リンギングは完全には回避できませんが、以下のような方法で大きく軽減できます:
方法 | 説明 |
フィルター長を短くする | リンギングが減るが、高域成分の損失が生じやすい |
ウィンドウ関数を工夫する | Blackman、Hann、Hamming、Kaiserなどを活用 |
最小位相フィルターを使用する | リンギングを片側(主に後ろ)に限定する |
オーバーサンプリング | 高いレートで処理してからダウンサンプリングする |
フィルター選択機能の提供 | ユーザーが好みに応じて選べるようにする |
リンギングは、sincベースのフィルターが持つ数学的な宿命です。しかし、フィルター設計やユーザー選択の工夫によって、実際の影響は大きく抑えることが可能です。
高音質オーディオや細かい画像処理を行う場合は、フィルターの選定が品質を左右する大事なポイントとなります。
Pine Player Proのような高機能プレイヤーでは、リンギング対策として複数のリサンプリングフィルターを搭載しています。ぜひ好みに合った音質を探してみてください。

OSF(オーバーサンプリングフィルター)は最適なフィルターアルゴリズムが自動で設定され、常にベストな状態で再生されます。ただし、特定の曲に対して個別に設定を変更したい場合は、**CSF(カスタムサンプリングフィルター)**を選択し、以下のオプションを使用して調整してみてください。
リサンプリングの品質やリンギングの制御は、主に次のオプションで調整できます
オプション | 説明 | リンギングへの影響 |
Filter Size | フィルターのサイズ(タップ数)を設定 | サイズが大きいほど高音質になるが、リンギングが増加する可能性あり |
Phase Shift | フィルターの位相段階数(4~30) | 低い値は最小位相効果でリンギングを抑制、高い値は周波数応答が高精度になるがリンギングの可能性増加 |
Cutoff | カットオフ周波数の比率(0.0~1.0) | 小さい値に設定するとエイリアスを抑え、リンギングも軽減される |
Precision | 内部計算の精度(デフォルト:16) | 精度を高くすると、よりクリアな音質を実現 |
filter_size | (libsoxr専用)soxr フィルターのサイズを設定 | リンギングの抑制に影響する |
Filter Type | フィルターの種類を指定 | デフォルトではKaiserが推奨されるが、リンギングを減らすにはLanczosやBlackman Nuttallも有効 |
留言